盆梅の管理
盆梅の一年
長浜の盆梅は約300鉢、地に植えているものを含めれば2000本近い。
これを盆梅専門員が1年を通じて管理しているが、育成管理にはわが子を育てるのと同様、温かい愛情とともに厳しい管理が求められる。皆さんが盆梅を目にされるのは、1年の内わずか2ヶ月。
しかしながら、花が咲き終わった瞬間から来年の開催にむけ、皆さんには見えない1日として欠かせない手入れが始まる。
盆梅搬出
盆梅展が終了すると展示品を竹やロープで厳重に補強し、搬出する。重さが800㎏を超える盆梅は15人がかりの大仕事になる。運び出した盆梅は、長浜市内に4ヶ所ある管理圃場へ運び込むことになる。
植え替え・移植
お客様から「盆梅は展示が終わると、畑に戻して管理するのですか」と聞かれることがある。確かに樹勢が弱り力を蓄えるために、地植えにすることはあるが、基本的には1年中鉢で管理している。
盆梅は1年中鉢で管理しているが、3月下旬には植え替えをおこなう。おおよそ3年に1回の頻度で、そのタイミングは、盆梅個々の特性を見極めてから判断する。盆梅に用いる土は、水持ちや水捌けが良く、肥料持ちが良いという難しい条件を満たさなければならない。赤玉と砂の配合、砂にあっては大小の配合など、ここが苦労するポイントになる。
移植も大切な作業である。地に植えてある約1700本の梅の木は、盆梅としてデビューするまでに、概ね10年から20年の歳月がかかる。3~5年に1回の頻度で根を縮めるために移植をおこない、鉢植えの準備をする。落葉する11月末から根の動き出す2月までの作業になる。
管理している梅には、2、3年の若木もある。盆梅展の百年先を考えて、いつ展示できるか分からないが日々管理している。
剪定
梅の花は、4月に伸びた枝に花が咲く。翌年になって、前年の枝に咲くことはない。咲き終わった後そのままにすると、新芽は出るものの樹形が崩れる。美しい形を保つため、欠かすことのできない作業が剪定である。その方法は、枝の根元から花の咲いていた所を2ヶ所ほど残して切り落としていく。盆梅展では、展示の終わった盆梅から剪定作業を随時おこなっている。
肥料やり
梅は、肥料を欲しがる植物である。窒素、リン酸、カリウムを配合した肥料を月に1回、4月から6月と9月、10月の合計5回与える。美しい花を咲かせるには、木が十分な力を蓄える必要がある。そのために、1年を通して十分な栄養を与えている。
消毒
月に1回予防としての消毒は、欠かすことができない。さらに木の葉を1枚1枚観察し、病害虫を発見すれば殺虫剤や殺菌剤を散布する。
もしも、万が一伝染病などが発生しても、盆梅展の開催に影響を及ぼさないために、盆梅の管理圃場は4ヶ所に分けている。
紗掛け
4月から5月は遅霜から新芽を守るためにネットを、7月の梅雨明けから9月にかけては直射日光を避けるために遮光ネットで木を保護している。
芽摘み
花後に伸びた新しい枝を適当な長さに整えることである。約15㎝(葉が10枚位)ほど伸びたところで、指の爪を使い、新芽の先を摘む。この時期に、盆梅の形を概ね整えていく。
水やり
通常、朝方に水をやる。しかし、夏場には朝と昼の2回、気温の高い時などには葉が焼けるのを防ぐために、夕方葉に水を掛けることもある。冬場は2,3日に1回だが、その量は盆梅の状態を見ながらおこなう。基本的な水やりが最も大切で難しい作業である。
整姿
盆梅の落葉が終わると同時に、形を整える整姿作業が始まる。不要な枝は切り、形を整え展示に備える。
開幕準備
12月中旬になると、いよいよ展示するための盆梅を搬入する。大きいもので高さ3m近く、重さ800㎏ほどある盆梅を、すべて手作業で搬入するため、30人余りの大仕事になる。鴨居に枝が触れて折れないように、花芽を落とさないように細心の注意が必要になる。
盆梅は、開花に合わせ早咲きから遅咲きまでをローテーションで展示していくことになる。
盆梅展期間中
盆梅展期間中は展示品の水やりや温度・湿度の管理、盆梅の入れ替えや咲き終わったものの剪定に追われる。それでも美しい花が咲き、梅の香りが会場に満ちた時は、1年の苦労が報われる。
古木探し
管理の合間を見て、ワビ・サビのある梅の古木・巨木を探し求め東奔西走している。近隣の方や盆梅展のお客様から「家にある梅を盆梅展で使わないか」と声をかけていただくことも多く、梅の木の状態を見に行き、掘り起こして管理圃場へ植え込む。日本一の盆梅展を、さらに見応えのあるものにするためである。